遺言が優先されるからといって、被相続人の意志だけが万能ではありません。
遺言といえども侵害できない範囲があります。
それは民法が保証している、相続人が取得できる最低限度の相続分のことです。
これを「遺留分」といいます。
法定相続人にあたる人が相続財産を全くもらえず、生活が困難になってしまう場合を防ぐため、相続人に最低限の財産の相続を確保する権利を法律で定めています。
遺言でもこの遺留分は侵すことができません。
遺留分を持っているのは、配偶者、子、親(直系尊属)で、兄弟姉妹にはありません。
被相続人の兄弟姉妹は、法定相続人にはなれても、遺留分権利者にはなれないのです。きん
遺留分割合
相続人の組み合わせ | 各人の遺留分 |
配偶者のみ | 配偶者1/2 |
子のみ | 子1/2 |
配偶者と子 | 配偶者1/4 子1/4 |
配偶者と父母 | 配偶者2/6 父母1/6 |
父母(祖父母)のみ | 父母1/3 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者1/2 兄弟姉妹は無し |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹は無し |
遺留分減殺請求
自分の相続分が遺留分を下回り、不服と感じる場合は、その分を請求できます。
請求しなければ現状は変わりません。
自己の遺留分を主張して、侵害されている財産を取り戻す意思表示をすることを「遺留分減殺請求」といいます。
侵害している相続人に対して意思表示をすれば遺留分減殺請求の効力が生じます。
内容証明で相手に意思表示し、証拠を残しましょう。
遺留分減殺請求には時効があります。
遺留分を侵害された相続人が、相続があったこと、および自分の遺留分が侵害されていることを知ったときから1年、あるいは相続開始のときから10年間で、この期間を過ぎた場合は請求権がなくなり、相続は有効として成立します。時効が成立するのです。
遺留分減殺請求の方法
遺留分減殺は、相手方(受遺者または受贈者)に対する意思表示をもってすれば足りますが、家庭裁判所の調停を申し立てただけでは、相手方に対する意思表示とはなりません。
調停の申立てとは別に、内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。
なお、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者にも減殺請求権を行使する旨を知らせておきましょう。
内容証明郵便による意思表示を行った後は、相手方と協議交渉をすることで遺留分をもらえる場合はありますがそうでない場合、家庭裁判所で話し合う「調停」、それでも応じてもらえない場合には、裁判を起こす「訴訟」という方法があります。
遺留分の金銭債権化など法改正(2019年7月1日~)
今まで遺留分権利者は、現物での返還が主体でした。
例えば、遺留分を侵害する贈与等の対象が不動産であった場合、遺留分権利者は相手方に対し、その不動産の持分を返還してもらう請求でした。
今後、遺留分権利者は、遺留分侵害額をすべて金銭で請求することになります。
また、相続人に対する特別受益に該当する贈与は、相続開始の何年前になされたものであっても、基本的に遺留分算定の基礎となる財産に含めていましたが、相続開始前の10年間の贈与に限定するようになりました。
これにより、相続人に対し、相続開始より10年以上前に贈与された財産は、遺留分を算定するための財産の価額に含まれないことになります。
<葬儀あとのガイドブック抜粋…P55>
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