特別代理人とは
相続人の中には、未成年者や行方不明者、認知症などで法的な判断ができない人がいます。
こうした人たちを除外して行った遺産分割は無効です。
そういう場合には特別代理人を家庭裁判所に申し立てて決めなければいけません。
そういう相続人の為に代理を行なうのが特別代理人です。
特別代理人の選任が必要なケース
○未成年者がいる場合
満20歳にならない子は遺産分割協議には参加できません。
通常、未成年の代理は親がしますが、親も同じ相続人の場合は、家庭裁判所で特別代理人を選定してもらいます。
(法定相続分の無い「子の祖父母」なら、特別代理人になることができます)
子が複数人いる場合は、それぞれに特別代理人が必要です。
特別代理人の選定の申し立てができるのは、親権者と利害関係者です。
○行方不明者がいる場合
遺産分割協議は相続人全員の合意がないと成立しません。
そのため行方不明者がいると分割協議が滞ってしまいます。
戸籍や住民票などで調査を尽くしても行方がわからない場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらい、その人の参加で協議を進めます。
通常、不在者財産管理人には、申立人が推薦する利害関係のない故人の親族などがなりますが、適当な人がいなければ、家庭裁判所が弁護士などの専門家を選任します。
行方不明の期間が7年以上の場合は、家庭裁判所に「失踪宣言」を申し立てて、行方不明者を死亡したものとして遺産分割協議を行うこともできます。
その場合でも、行方不明者に子がいた場合は、その子が分割協議に参加します。
※行方不明者ではありませんが、海外在住で分割協議に参加できない人がいる場合は、遺産分割協議書を送って、それを返送してもらうケースが多いようです。
しかし海外には実印や印鑑証明の制度がなく、サインもしくは拇印で大使館や領事館で証明書を発行してもらいます。
○相続人が認知症などの場合
認知症や知的障害、精神障害などで合理的な判断ができない相続人に対しては「成年後見制度」を利用し、成年後見人が協議に参加します。
成年後見人制度では判断能力によって、重い方から
①成年後見人(判断能力が全くない場合)
②保佐人(判断が著しく不十分な場合)
③補助人(判断能力が不十分な場合)
が選任されます。
成年後見人は、その相続人の権利を守ることが義務付けられているので、法定相続分を確保しようと努めます。
また、成年後見人の申し立てから確定まで数か月かかりますので、成年後見人が必要な場合は早めに申し立てをしましょう。
申し立てができるのは本人以外に配偶者や四親等内の親族です。
私の経験より~
ご主人が亡くなり、相続人は奥様と小学生の子供一人というご家庭で相談を受けた話しです。
相続の時、この子供に特別代理人(家庭裁判所から選ばれた人)が付いたので法定相続分(半分)を渡すような相続をしなければいけなかったとの事でした。
奥様の受け取る分を調整すれば相続税も掛からなかったのに、法定相続分通りの分け方になったので、相続税を払わなくてはならなかったというのです。
遺言書があれば事態は変わったと思いますが、それは無い状態でした。
今から親の子供に対する責任とか、子供の学費を親が払うことになろうが、税金が掛かろうが、受け持つ相続人の利益を確保する目的で特別代理人は選任されるのです。
子供の学費を、子供が自分の相続したお金から支払う…そんな歪な状態になるのですが、
実際、税金が掛かっても法定相続分通りに決めないといけません。
子供もそれを望むのでしょうか?
少し私は改善の余地がある制度なのではと思ってしまいます。
<葬儀あとのガイドブック抜粋…P47>
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